イベントレポート

XVL 3次元ものづくり支援セミナー2011 講演レポート

セミナーでの講演をレポートで公開します

事例紹介

ユーザー講演

3D データ活用によるフロントローディング

株式会社ナナオ
製造部 生産技術課 係長

中村 光宏 様

株式会社ナナオは石川県白山市に本社を置き、『 EIZO 』 ブランドで知られるコンピュータ用モニターや医療撮影装置用モニター、アミューズメント用モニター等、映像機器とその関連製品の企画・開発・製造・販売・アフターを手がけるグローバルカンパニーである。

本社には開発、生産部門が共存・一体となり、「 最新技術を駆使したものづくり 」、「 商品化までの期間短縮 」、「 総合的な品質管理 」 を主眼として 100 % 自社開発・自社生産にこだわった 『 ものづくり 』 を行っている。

取り組んでいる 『 ものづくり 』 革新テーマ

近年、ナナオを取り巻く外部環境としてニーズの多様化、ライフサイクルの短命・短縮、価格競争の激化という変化が生じてきており、それぞれの対応を迫られている。一方、社内においては開発コストの上昇、生産・物流・在庫コストの上昇、組織の硬直化や部門の壁といった問題が発生し、内部構造改革の実施が最優先課題となってきた。

これに取り組むべく、『 ものづくり革新 』 を以下 6 つのテーマにて推進している。

  1. 構造改革
  2. 開発/生産業務革新
  3. プラットフォーム化
  4. フロントローディング
  5. XVL 活用
  6. 人材育成

企業風土・体質・仕組みおよび業務プロセスを横断的に見直しするために、「 ものづくり革新委員会 」 を 2005 年に設立し、活動し始めている。特に開発・生産業務革新チームでは課題解消策として ① 設計のプラットフォーム化、② 部品の標準化、③ フロントローディング、④ 生産の自動化( 人材育成 )をテーマに上げている。

フロントローディングでの XVL 活用

設計から試作、量産までのプロセスにおいて、試作以降の問題発生による対応コストは増大する。製造業の競争力の源泉は設計開発にあり、開発期間の短縮、コスト削減は至上命題である。

ナナオでは 「 試作回数を減らす 」 、「 生産準備を含めた開発リードタイムを縮める 」 ことを目標にフロントローディングに取り組んでいる。

そこで、手戻り対策として重点においたのが ① 3D データ活用による製品の可視化、② 設計シミュレーション、③ 品質工学の 3 点である。

その中でも力点を置いた ① の目的は 「 Qualityの前倒し 」 で、試作品( 現物 )がない段階において後工程の担当者が設計内容を理解し、設計段階で後工程の問題を把握し、期間短縮を図るものである。この製品可視化のツールとして XVL を活用している。

具体的な方法として、設計部門から開示された CAD データを評価の段階から生産部門でも XVL で共有し、事前のデザインレビューを全評価部門で行っている。形状確認、断面、干渉クリアランスチェックを行うツールとしてXVLを使用している。このレビューにより指摘された問題点、改善点を設計にフィードバックし設計変更後に製作着手している。

また、設計段階において治具設計データも XVL に変換し、製品と治具を重ね合わせ治具が問題ないかを製造部門にレビューし問題点を洗い出している。問題点を対策してから治具製作に取り掛かっているため、後工程での問題発生防止に役立っている。

3D 作業指図書の活用

試作の組立現場ではタッチパネルモニタに 3D の作業指図書を表示し、実際の作業者が 3D 形状を確認しながら組立作業を行っている。従来の 2D 図面では把握しにくかった形状や加工指示などが 3D では一目で確認できるため、「 2D 図面から立体形状を想像する必要がなくなった 」、「 部品取付け位置の把握がしやすい 」 といったメリットが出ている。

これら製品可視化の効果として、試作以降で発生する製品不具合や改善要望件数が激減し、設計段階で問題点の潰し込みが進んでいる。今後は設計試作を無くし従来の開発期間を約 1 / 2 に短縮することを目標としている。この活動は確実に社内に拡大、定着化してきている。さらに、海外子会社とのコラボレーションや取引先への 3D 提供、ユーザ向け Web サイトコンテンツ制作に活かされはじめている。

人材育成の必要性

ナナオでは製造における自動装置等の設備導入を進めてきたが近年、変種・変量の生産も増加してきている。「 機械化 」 の一方で、「 人 」 が優位である箇所を明確にしたが、その作業レベルを維持するためには人材育成や人材確保が欠かせない。

この対応として 「 技能育成センター 」 を開設し、熟練レベルの維持を行っている。ここでも 3D データが活用され、ビデオでは把握しくい作業も 3D データで把握が容易になり、教育期間の短縮、作業習熟度の向上といった効果も現れている。

まとめ

フロントローディングの真の狙いは、製造の知識を設計に活かすことである。これを実施するために、

  1. 製品の可視化を行うこと
  2. 仕事の進め方の可視化
    いつ、どのようなものができるかを可視化し、情報共有を行う。
    後工程は協力体制をしっかり整えて生産準備や作業着手を前倒ししておく。
  3. 問題の可視化
    これはどんな問題が起こりそうかを予測し、何を解決しておけば良いかを
    明確にしておくことが設計期間短縮につながってくる。

この 3 つの側面を実現するためにも、製造、開発、マネージメントの物理的距離感を縮めておくことが非常に重要である。さらに、これらの活動を繰り返すことにより、質の高い、スピード感のある力強い現場が出来上がってくると確信している。

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