イベントレポート

XVL 3次元ものづくり支援セミナー2018 講演レポート

セミナーでの講演をレポートで公開します

事例紹介

基調講演

お客様サービスを変革するヤンマーの IoT 戦略
A SUSTAINABLE FUTURE ~テクノロジーで、新しい豊かさへ。~

ヤンマー株式会社
取締役
ビジネスシステム部 部長

矢島 孝應 様

2018年5月11日(金)東京、8月3日(金)名古屋で開催された 「 XVL 3次元ものづくりセミナー2018 」 基調講演には、ヤンマー株式会社 取締役 ビジネスシステム部 部長 矢島孝應氏が登壇し、” お客様サービスを変革するヤンマーの IoT 戦略 A SUSTAINABLE FUTURE ~テクノロジーで、新しい豊かさへ。~ ” と題した講演で、ヤンマーが現在進めているデジタル戦略の内容とその背景について紹介を行った。

創業 100 年、次の 100 年の目標に向けて

 2012 年に創業 100 周年を迎えたヤンマーでは、次の 100 年に向けて、お客様に対してヤンマーの本質的価値をきちんと伝えるために、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏と工業デザイナーの奥山清行氏を招き、ブランドイメージや製品デザインを刷新する 「 YANMAR PREMIUM BRAND PROJECT 」 に着手し、ブランドステートメント 「 A SUSTAINABLE FUTURE -テクノロジーで、新しい豊かさへ。-」 の実現に向けた取り組みを進めてきている。その成果について、矢島氏は次のように述べる。

 「 今までの取り組みによって、商品デザインやブランドイメージはかなり浸透し向上してきた。一方、顧客サービスや従業員の業務プロセスがプレミアムかと問われると、まだ改善の余地があると考えている。 」

 そこで IT 部門としては、情報活用の強化と業務プロセス改善を通じて、中期計画目標達成に向け貢献できる道筋を模索することになった。具体的には、ヒト・モノ・カネにかかわる情報化戦略のフレームワークを定義し、それをさまざまな切り口から整理しながら、個別の取り組み対象領域と具体的な施策へと落とし込んでいった。

企業価値とサービス価値の向上に ICT がどう貢献できるか

 具体的な取り組みの 1 つが、3D を使った技術情報の管理と活用だ。設計開発においては、3D CAD として全社的に Pro/E(Creo)を採用している。ここで作られた 3D CAD の設計データを XVL に変換し、デザインレビューや生産準備などの後工程で活用している。また XVL の形状データを出力することで、販売や保守といったサービス部門の資料やマニュアル制作にも役立てようとしている。

 また、重要な顧客接点である Web サイトのリニューアルも行った。従来は拠点ごとにバラバラに乱立していたサイトを 「 yanmar.com 」 に統合し、ヤンマーブランドとして世界共通のブランドメッセージを発信するようにした。

 製品を購入していただいた顧客へのサポートセンターの強化も行った。製品に取り付けられたセンサーから発信される稼動データを基に、製品を 24 時間 × 365 日体制で監視・サポートする 「 リモートサポートセンター 」 を新設し、ICT 技術を使った新たなサービスをバックアップできる体制を強化した。

 さらに、ICT を使った働き方改革にも取り組んでいる。ヤンマーが目指す働き方改革は、グローバルな情報共有基盤を整備し、場所や時間を問わず働ける環境を実現すること。これによって、従業員のワークライフバランスを向上するとともに、例えば顧客と直接顔を合わせる現場の社員と、各分野の専門家が、場所を問わずリモートでコミュニケーションが取れる仕組みを実現することで、顧客へより高い価値を提供することを目指している。

IoT をはじめとする先進技術を使って、新たな価値を提供

現在同社では、IoT をはじめとする先端技術を活用することで、これまでにない新たな価値を顧客に届けることを目指している。

「 これから日本は、農業人口が急速に減っていく。そこで、少ない人員で多くの食糧を生産できるよう、農業の生産性向上が急務になっている。そのためにICT技術をどう役立てられるのか、さまざまな試みを進めている 」(矢島氏)

その最新の成果が、「SMART ASSIST」と呼ばれるサービス。農業機械にIoTセンサーを装備することで、農業にかかわるあらゆる情報を可視化し、農業経営に活用するというものだ。

 さらに無人で農機を運転できる「ロボットトラクター」の商品化にも成功している。また、コニカミノルタ株式会社と共同で設立した合弁会社「ファームアイ株式会社」では、ドローンで農地を上空から撮影して稲の生育状況を見える化し、その写真を解析することで、お客様に合った営農支援を提案するソリューションを事業化している。

そして、食材のトレーサビリティと食の安全を確保するなど、先進IT技術を使ったさまざまな施策に、引き続きチャレンジしていきたいとしている。

 「弊社は今後、単なる農業機械メーカーから、食物の生産から食卓に届くまでの、食の安全を含めたすべてをサポートし、『農業』を『食農産業』へと進化させていきたいと考えている。」「さらにはエンジンテクノロジーをコアにし、農業以外にも建設、マリン・漁業、生活一般など、さまざま分野にそれぞれ適切なテクノロジーを提供することで、テクノロジーと生活、テクノロジーと企業のいい関係を築き上げていきたいと考えている」(矢島氏)

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