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SPECIAL 対談|3D を DX に活かす (2) セマンティック PMI 実現への道しるべ

2021年10月26日

2021年
9月

[エリジオン × ラティス・テクノロジー]

3D を DX に活かす (2) セマンティック PMI 実現への道しるべ

今回は、(1) CAD 系の 3D フォーマットの標準化動向、(2) 3D 図面を実現するためのセマンティック PMI の最新動向、(3) 製造業の未来を変える 3D の未解決問題 の 3つのテーマで、株式会社エリジオン 取締役 CTO 相馬 淳人 様にラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 鳥谷 浩志 (プロフィール)がオンラインでお話しをうかがいました。

※本対談は3回に分けてお届けいたします。

株式会社エリジオン 取締役 CTO 相馬 淳人 様とラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 鳥谷 浩志

鳥谷:
今回はエリジオン CTO 相馬さんとの 2回目の対談です。
*前回対談|3D データで繋ぐ~ (1) CAD 系の 3D フォーマットの標準化動向

今回のトピックは、3D 図面を実現するために重要な役割を果たす PMI (Product Manufacturing Information)、つまり、寸法や公差、注記といった製品製造情報の最新動向について、前回に引き続き相馬さんに伺います。

3D の PMI については、表示するだけの情報からその意味もきちんと情報として持つというセマンティック PMI へと進化しつつあります。エリジオンさんの CAD データ変換ビジネスも、形状変換から始まって、PMI のようなメタデータ変換まで手掛けるようになってきましたね。

相馬:
はい。前回の対談でもお話しましたが、もともとは二つのCADの間で3D形状をいかに正しく渡すかというところからスタートしました。今では、こちらの図の縦軸にあるように設計の意図や、製造方法に関わる諸々の情報が含まれる構成、属性、PMI、図面といった要素へとデータ変換対応要素が拡がってきています。

図1 (資料提供:株式会社エリジオン)
図1 (資料提供:株式会社エリジオン)

鳥谷:
形状と構成、属性、PMI のようなメタデータの変換では、それを開発する技術者の必要なスキルも変わってくるのではないでしょうか?

相馬:
形状の変換では、極端な話、ユーザーの設計業務に詳しくない場合も形状データとしての 「自然さ」 は判断できる場合が多いので、数学的な処理が得意な人たちを集めて、突っ走っていけました。それに対して構成、属性、PMI といったメタデータに関しては、人間系の要素が多分に含まれるため、それをどのようにうまくITで扱うかという全く別の課題となります。そのため、情報処理の得意な人々でまかなっています。

その延長として、将来的には、ビッグデータ処理や、AI といった分野との連携にも可能性を感じていますので、大きな視点をもって取り組んでいきたいと思っています。

鳥谷:
図1 にある変更検出の部分ですが、二つの CAD データのリビジョンの違いを分かりやすく、示すということでしょうか?

相馬:
図1 の “リビジョン間の変更検出” と “変換派生データのデータ保証” に対して、ともに 「validation」 という英語の注釈を入れているのですが、2つの CAD データを比較し、相違点を検出してわかりやすく示すというツールを、両方の目的で提供しています。

まずリビジョン間の差分についてですが、意図通りの設計変更に加えて、CAD のバージョンアップやモデリング操作の思わぬ影響など、ユーザーが意図しない形状変化が発生する場合もあります。リビジョン間の相違をもれなく自動で検出するツールは、変更を保証し信頼できるデータを流通させるためには重要だと考えています。また、変換派生データの保証は、特に PMI で重要だと考えています。

形状の場合、変換後のデータを見れば失敗に気づく場合が多いのですが、PMI の場合は変換時になくなっても認識できません。受け取った人はもともと何があったか分からない。ですから、PMI は変換保証を入れないと怖いのです。

PMI の最新動向とセマンテック PMI

鳥谷:
なるほど。見ただけでは分からないからこそ PMI の保証が大事になってくるのですね。それでは、本題のセマンティック PMI の話に入りたいと思います。

まず、PMI には見るだけのグラフィック PMI とその意味まで表現できるセマンティック PMI がありますね。この二つの PMI の最新動向と、なぜ今、セマンティック PMI が注目されるようになったのか、その背景を説明いただけないでしょうか?

相馬:
一般に PMI には注記や寸法、幾何公差のデータがあります。これらのデータの利用方法には大きく二つあります。一つは人が目で見て次の仕事をするための 「ヒューマンビジブル」 なもの、もう一つはソフトウェアが自動処理するための 「マシンリーダブル」 なものです。PMI の中で前者の役割を 「グラフィック PMI」、後者の役割を 「セマンティック PMI」 と呼んでいます。

寸法とか、幾何公差は図面由来の記法であるため、人が目で見て判断するという要素が大きかったので、グラフィック PMI の方が相性が良く、先行して活用されておりますが、一方のセマンティック PMI の方は活用がなかなか進んでいません。

たとえば、検査や品質の場面で、依然として 2次元図面が残っていますね。これは、寸法や公差の情報が重要な役割を果たしているからで、セマンティック PMI が渡っていないために、公差情報の再入力などのムダな作業が発生し、それにかんするミス・手戻りも発生していると思います。今後 DX (デジタルトランスフォーメーション) を進めるのであれば、一度作ったデータはマシンリーダブルな形で次の工程に伝えられるようにしなければいけないでしょう。

図2 (資料提供:株式会社エリジオン)
図2 (資料提供:株式会社エリジオン)

鳥谷:
マシンリーダブルであることがセマンティック PMI の本質であるということですね。しかし、それ以前に、ヒューマンビジブルなグラフィック PMI ですら、CAD で入力している人はまだまだ少ないのではないでしょうか?

相馬:
はい、そうなのです。CAD でまじめに入力しているのは、2、3割が関の山でないでしょうか。

鳥谷:
CAD で入力されている現在の PMI は、ヒューマンビジブルにもマシンリーダブルにも扱えるのでしょうか?

相馬:
マシンリーダブルにするためには、ソフトウェアが曖昧さを排除しないといけません。寸法や公差だけだと曖昧さが残るので、幾何公差で正確に指示されていないとマシンリーダブルは難しいのです。

鳥谷:
「曖昧さの排除」 ということですが、ヒューマンビジブルであれば、普通に公差が入っており現場の人が見て、経験から的確に判断できていた。それを正確にモデル上で記述しようとすると平行度や平面度といった幾何公差が必要になるということですね。

マシンリーダブルにするには、後工程のプロセスにちゃんと適合するように設計部門でルールを作って、幾何公差を入力しなければならないということになります。これは、導入側のハードルがかなり上がりますね。

相馬:
確かにそうなのですが、そのような入力がされて初めて、測定器を動かすソフトウェアがデータを解析でき、自動計測の結果を見て、OK や NG の判断を自動的に出すというところに辿り着きます。このあたりは、CAD の方でもだんだんと機能が良くなっている領域です。

ただ、セマンティック PMI の情報は、後工程のソフトでは受け取れなくて、手直しが必要になることが多いです。それこそ昔、形状データを変換し始めたころに、後工程の金型屋さんが IGES データをもらって、それを見て、1 からモデリングしていた時代があったと思うのですが、今はまだそれに近い状態です。

鳥谷:
3D CAD データが流通して、それがまともに使えるようになるまで 10年レンジの時間がかかりましたが、マシンリーダブルの世界に到達するには、5年とか 10年といったレンジでの時間が必要になりそうですね。

相馬:
それを踏まえた上で、エリジオンではセマンティック PMI をどうサポートするかということを検討しています。CAD データ変換ベンダーとして、どのタイミングで、どこまで対応するのかについては広い目で捉えて行かねばならないと思っています。

基本的にはヒューマンビジブルに加えてマシンリーダブルまでカバーするべきだと思っているのですが、元になっている図面の幾何公差表記自体が現在も変化しつつある分野なので、アンテナを高くしなければならないと考えています。

鳥谷:
ヒューマンビジブルなデータを、それこそ、エリジオンさんがヒーリングしてマシンリーダブルにするようなことはできないものでしょうか?

相馬:
面白い発想ですね。しかし、ヒーリングするための前提となる文脈や、図面の前置きが多すぎて難しいです。非常に文脈依存のところが大きく、それを解釈するという AI 的なものが必要になると思っています。

鳥谷:
誰かが AI を正しく導くための教師データを与えなければならないということでしょうか?

相馬:
そうですね。図3 を見てください。左側にあるような図面をもらうと、専門家は頭の中で右側の 3D をイメージし、PMI に込められた拘束条件や意図を推定しているわけです。

逆に、PMI 表記付きの図面を書く時も、専門家は伝えたいイメージや意図を、図面を通して直感的に伝えるために、脳内で記号化するわけです。非常に複雑なロジックが必要になるので、AI の出番もあるかもしれません。

図3 (資料提供:株式会社エリジオン)
図3 (資料提供:株式会社エリジオン)

PMIのあり方

鳥谷:
なかなか深い話になってきました。当たり前ですが、PMI のあり方には図面の影響が強く残っているということなのでしょうか? 図4 を見ると、セマンティック PMI の技術領域には図面の影響が強く残っているように見えます。

図4 (資料提供:株式会社エリジオン)
図4 (資料提供:株式会社エリジオン)

相馬:
図面規格や PMI を含む MBD 規格は図面上に書かれるものなので、基本的に表示主体になります。ですから、この部分には 2次元の図面の影響が大きくなります。3D CAD で設計したモデルもこの規格を参照して表示されます。CAD にもそれぞれのモデリングや入出力の機能があり、それを受けるデータフォーマットがあり、それを利用するソフトウェアもあります。それぞれが、PMI を正しく解釈しなければなりません。

鳥谷:
今の話を聞いて、昔の話を思い出しました。まだ 3D CAD が黎明期の頃、3D を外枠だけで表現するワイヤフレーム CAD があり、人が脳内で補完して完全な 3D モデルとして見ていましたね。

やがてソリッドモデルが実用化され、シミュレーション可能な完全な 3D モデルができてデジタル化が一気に進みます。これと対比してみると、セマンティック PMI はまだワイヤフレーム段階にあるのではないでしょうか?

相馬:
まさにその通りです。その技術完成度はワイヤフレーム段階ですね。目の前の問題を解決しつつ、次のものにも取り組まないと、セマンティック PMI は広まらないかもしれません。

鳥谷:
JEITA や JAMA ではこのあたりの議論はされているのでしょうか?
* JEITA:一般社団法人電子情報技術産業協会、JAMA:一般社団法人 日本自動車工業会

相馬:
JEITA の CAD 委員会で議論を続けているのですが、3D の形状データを前提として、普通公差のルールをしっかり決めることで、作成する PMI の数も必要最低限になり、利用する幾何公差の種類もかなり限定することができそうです。

また、今の 3D 注記という形にこだわらず、たとえば面の色でデータムと基本的な幾何公差の設定を表現しソフトで自動的に 3D PMI 化するという実証も行いました。図面の表現自体は、エビデンスとして残さなければならないので、そこは必ず残ると思いますが、図面と CAD のデータをどう繋げていくかということは、まだこれから試行錯誤していく必要があります。足元では、汎用的な解というのはなく、お客様ごとに最適解を提示することになるでしょう。

鳥谷:
実用化には相当な時間がかかりそうですね。その時間を短くする方法はないのでしょうか?前回の話では、QIF は検査の自動化にターゲットを絞って標準化を進めているとのことでしたが、このあたりがヒントになるでしょうか?
* QIF:国際標準規格の 3D フォーマット

相馬:
製造業では、そういった品質につながる取り組みは重要だと思っています。QIF では ID で世界各国の工場の品質データを蓄積し分析できるようになり、歩留まりが上がり、差別化出来る。そうなれば、改革へのモチベーションが上がってくるでしょう。設計がデータを作って、それに検査結果をつけて、設計側にフィードバックするループを構築できれば、品質面も向上していきます。

鳥谷:
ということは、QIF にもセマンティック PMI を入れていくのでしょうか?

相馬:
はい、QIF では真面目にセマンティック PMI を入れています。測定側のルールも定めて、自動判別できる仕組みになっている感じです。ノウハウが溜まっていけば、ますます自動化が進み、メリットが感じられるようになると思います。

鳥谷:
最終的には、検査工程そのものが、全自動化されるというわけですね。

相馬:
そこを目指しています。この領域では、効果が出やすいと思うので、進み方も早いのではと期待しています。

鳥谷:
セマンティック PMI は、少し高い視点で見て、長期的に取り組まなければならないテーマだということがよく分かりました。ラティスでもエリジオンさんと協調して、CAD の PMI を正しく XVL に渡し、XVL ソリューションで正しく解釈することで、来るべきセマンティック PMI の時代に備えていきたいと考えています。貴重なお話をありがとうございました。

(続く:3D データで繋ぐ~ (3) 製造業の未来を変える 3D 技術)

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