濡れた雑巾を絞れ!- 全体最適化におけるXVL PLM の役割とは –
株式会社やまびこ
開発本部 技術管理部 製品取説課 主任
田中 剛 様
イベントレポート
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事例紹介
株式会社やまびこ
開発本部 技術管理部 製品取説課 主任
田中 剛 様
株式会社 やまびこは、東京都青梅市に本社を構え、農林業・産業機械を自社開発する製造メーカである。2009年 10月 に共立と新ダイワ工業が合併し、約 2,500 名の企業としてスタートした。
「パーツカタログ改善の意義とは」
国内外の代理店に対して 「 不満は何か? 」 を調査したところ、「 早く 」、「 正確に 」、「 ストレス無く 」 パーツカタログを提供して欲しい、という意見に集約された。この回答には、潜在的な要望の 「 本質 」 が潜んでいると判断した。
製造業におけるパーツカタログの重要度は、『 付け合わせの野菜 』 と例えられるように、決して上位ではない。しかし、顧客側には、部品発注や、製品構造を知るために必要な、数少ない貴重な情報源である。
従って、上記の様な 『 顧客要望の本質 』 に対応しなければ、信頼度は低下し、ブランド力を引き下げかねない。そこで、経営層に対し、要望の本質に応えうるシステムとして 『 XVL PartsList Master ( パーツリストマスター、以下 XVL PLM ) 』 を提案し、採用が決定した。
やまびこが採用した XVL PLM とは、WEB パーツカタログを作成・公開するシステムである。特長は以下の 7 つである。
1. WEB データからの諸データ出力
最大の特長は、本来最終成果物である WEB データを先に作成し、完成データから必要に応じて印刷用データ( PDF )や、CD-ROM データを出力できることだ。従来は、作成用、CD-ROM 提供用、WEB 公開用と、連携していない複数のデータベースが、導入により一元管理された。同一のデータベースから出力では、各成果物の情報の相違も生じない。
2. 作成ツールと、公開ツールの連携
作成ツールと連携することで、直ちに公開出来るので、データの公開時間が大幅に削減された。公開作業を外注委託すると、数日 ~ 1 週間かかることもあるが、XVL PLM では、わずか数分である。修正した 『 正確 』 なデータの再掲載にも有効である。
3. 超軽量 3D データ XVL の掲載だけでなく、既存データの掲載も可能
イラスト、リストデータに加え、超軽量 3D データ XVL の掲載も可能だ。これにより該当部品を容易に特定でき、視認性も向上する。顧客の 『 ストレスなく 』 という要望にも応え得うる。また、旧データ掲載も可能だ。合併時には、様々な形式のパーツカタログデータが存在したが、一斉に取り込んだ結果、稼働開始時から、約 1,900 のデータを同一システム上で閲覧可能となった。
4. 情報共有化ツールとしても応用可能
パーツカタログは社外だけでなく、社内の各部門でも活用されている。そこで、ID 管理により、閲覧項目を社内・社外で分けた。その結果、社外にはパーツカタログ、社内では情報共有化ツールとして活用する画期的なシステムとなった。
各部門の要望により掲載項目は、約 50 項目にもなり、また、今後の掲載項目増加にも対応する。更に、次フェーズでは、開発構想のメモ書きから、組立帳票、顧客要望、買替促進資料等を掲載する計画である。上流・下流工程、社内・社外で同じデータソースから、各権限別に閲覧し、PLM( プロダクト・ライフサイクル・マネージメント )として発展させることも可能だ。
5. 複数ブランドの一元管理が可能
合併後の新部品コードと、旧コードとの連携データも掲載した結果、部品在庫統合に大きな役割を果たしている。また、ブランドを超えた共通・類似部品の検索が容易になり、新規金型費用が数百万円単位で不要となるなど、経費削減効果も表れている。
6. 作成工程の国際( 在宅 )分業化が可能
WEB を活用した作業形態も大きな特長だ。イラスト作成や、公開処理等は、東南アジアへ、習熟が必要な BOM 作成、設変処理等は日本国内でと、国際分業化も可能となる。在宅勤務へも活用すれば、障害者雇用や、育児休暇短縮にも有効である。やまびこでは、2009年 6月 より本システムを活用した在宅勤務を試験的に開始している。
7. 間接的効果にも対応する柔軟な応用性
システム構築の第 2 フェーズのゴールは、部品名称の多言語化と、発注システム構築であった。続く第 3 フェーズでは、発注ログを活用した部品在庫圧縮の実現や、不具合早期発見、ワランティ処理の電子化等が目標となる。この様に、間接的に活用できる柔軟な応用性は、定量的にも、定性的にも多大なる効果をもたらす。
国際分業化を可能にする上で、もう一つの強力な武器がある。それが、やまびこが発案し、ラティス社が公式に認証した、 XVL テクニカルイラスト活用ガイドライン 「 松 」 「 竹 」 「 梅 」 だ。従来は、『 担当者のセンス 』 や、『 こだわり 』 に大きく左右されていた 『 作画 』 作業を 「 松 」 「 竹 」 「 梅 」 に明確に分類し、『 出力・加工 』 作業へ転換する提案だ。作画にかかる膨大な経費・工数は、劇的に削減される。
下記表は、導入効果を 『 見える化 』 する対比表だ。「 松 」 「 竹 」 「 梅 」 別の XVL 活用で、作画工数がどの程度削減出来るか、実際の作業工数を調査した。対象のサービスマニュアルでは、作画イラストが 75 点、写真撮影が 68 点であった。作画・撮影を XVL で代替した場合に、「 梅 」 グレード( 何も加工しない )と 「 竹 」 グレード( 「 梅 」 データを若干加工する )を織りまぜ、どの程度代替可能かを分析すると、転用可能率が、作画:85 % と、撮影:90 % となった。この場合、XVL 導入前の工数と比較すると、導入後の工数低減率は、最大約 70 % 程度となり、約一ヶ月の作業が、一週間程度に削減されると算出された。
「 松 」 「 竹 」 「 梅 」 活用の最大の特長は、習熟を要しないことだ。「 梅 」 グレードなら、簡単な研修だけで作業が可能だ。XVL 未導入の 「 日本人( 月給 30 万円 )」 の作業と、XVL グレード分類活用の 「 タイ人( 月給 5 万円 )」 では、経費削減効果( 給与ベース )は、最大で 95 % にもなる。
この様に、従来の特殊技能も技術革新で代替可能となり、劇的削減効果で浮いた経費・工数をより高付加価値の業務へ投入する動きは今後より活発になるだろう。日本人スタッフ自身が、常に付加価値の高い業務を模索し続けなければ、やがては、組織内での存在価値をも失う。
システム導入以前 ( 2007年 ) と、導入後 ( 2010年 ) を比較すると、BOM 作成が 50 %、イラスト作成で 90 % の工数を削減した。パーツカタログ発行実績は、約 200 データ( 重複データ含まず )から、2010年 半期で約 300 データとなった。データ一元管理で、重複作業や外注作成費用も削減された。第 3 フェーズでは投資以上の大きな間接的効果を実現するべくシステム構築を検討中である。
目指すべき更に大きな効果は、組織の壁を破壊し、自発的な提案を 「 見える化 」 する定性的効果だ。可能な限り情報を共有化して検索時間を削減し、風通しのよい強い組織へと作りかえる必要がある。経営層も、現場も同じ情報 = 意識を共有できない組織では、「 経営者意識で業務に取り組む 」 ことなど到底できない。問題を誰の目にも 「 見える化 」 し、一丸となって問題解決に当らなければ、やがては 「 死の谷 」 に転がり落ちるであろう。
実際、社外と社内とつなぐ共通言語としての 「 パーツカタログ 」 の役割は、当初予測した以上に重要であった。システムの本格稼働後、社内・社外からの改善要求が明らかに増加した。以前は諦め放置されていた問題が打ち上げられ始めたのだ。この流れを停滞させることなく 「 現場の真意 」 汲み取るシステムとして昇華させねばならない。
東南アジア地域は、ますます混沌とし、既存の概念の外で、独自に発展を遂げ始めているかの様だ。このカオスの中で、我々は過去の栄光にとらわれず、現状を謙虚に再認識せねばならない。高付加価値サービスで、販売店や代理店が、儲かる納得できる仕組みを具体的に 「 魅せる化 」 する必要がある。この市場では、安価な無名メーカー品よりも、品質がよい日本の中古製品が高値で販売される。しかし、ひとたび故障すると部品手配ができず、修理に苦慮する場合もある。これをビジネスチャンスと思わず放置するならば、世界に誇る日本のものづくりなど、早晩、忘れ去られてしまうに違いない。絞るべき雑巾は、「 乾いて 」 などいない。まだ 「 濡れて 」 いるのだ!
顧客満足度の向上と言われるが、本当の満足となんだろうか。自身に関わる人々全てを 「 顧客 」 と仮定して周囲を見渡してみると、仕事をしたいが職場にいくことが難しい、奨学金制度が十分でなく就学の願いが叶わない等、少しの手助けで、社会参加が可能になるケースが多いことに気づく。超軽量という特性をもった XVL や、WEB を媒体とする XVL PLM など、これら革新的技術を大いに活用し、社会的イノベーションを構築していくことこそ、世界に誇る日本のものづくりが担うべき役割ではないだろうか。
最後に、志をもった皆様へ、メッセージを贈りたい。
「 易しさ 」 は、「 優しさ 」 である。
※『3Dデジタルドキュメント革新』(JIPMソリューション刊)でより詳細な内容をご覧いただけます。
XVL を主体とした 3D データの一気通貫活用の取組み
豊田鉄工株式会社
生産管理部 部長 水越 修一 様
CAD データ( 3D 図面 )の長期保管
トヨタ自動車株式会社
エンジニアリング情報管理部 主幹 福田 順三 様
濡れた雑巾を絞れ!- 全体最適化における XVL PLM の役割とは
株式会社やまびこ
開発本部 技術管理部 製品取説課 主任 田中 剛 様
3Dデータ活用によるフロントローディング
株式会社ナナオ
製造部 生産技術課 係長 中村 光宏 様
XVL を活用した組立工程設計の効率化
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超大容量データで検証し、軽快に伝達する -XVL 最新戦略の全貌-
ラティス・テクノロジー株式会
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XVL Studio によるサービス資料イラスト作成の削減効果
本田技研工業株式会社
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XVL 3次元ものづくり支援セミナー2010
講演レポート