CAD データ( 3D 図面 )の長期保管
トヨタ自動車株式会社
エンジニアリング情報管理部 主幹
福田 順三 様
イベントレポート
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事例紹介
トヨタ自動車株式会社
エンジニアリング情報管理部 主幹
福田 順三 様
自動車業界では、開発期間短縮コスト削減、品質向上、グローバル化という共通の課題がある。この様な課題に対する回答の1つとして、3D 図面を主体とする業務への移行があり、自動車工業会( JAMA )は、3D 図面様式の標準化、3D 活用ツール( CAD / Viewer )の機能要求と実装、ガイドラインの発行などを行ってきた。しかし一方で、2D の図面の保管は、マイクロフィルムなどで対応してきたが、3D図面の長期保管の方法は定まっておらず、各社が検討をしている段階だ。
CAD データの作成には、ハードウェアと CAD アプリケーションが必要だ。しかし、ハードウェアは約 5 年、CAD アプリケーションは 8 ~ 10 年程度のサポート期限が設けられているが、ユーザはもっと長い期間、色々な目的で CAD データを必要としている。本来は、CAD データをそのまま保管し利用したいが、長期保管が可能なフォーマットに変換して保管せざるを得ない状況となっている。
3D 図面の長期保管に関して、自動車業界の各社には、次のような共通の懸案事項がある。保管運用の方法、保管期間、保管フォーマット、長期的な互換性、そしてネイティブデータから変換したときのデータの再現性等である。
この様な状況を踏まえて、JAMA は 3D 図面の長期保管方法の標準化に取り組むべきと考え、LTAR-WG( Long Term Archive & Retrieve Working Group )を 2009年 10月 に発足し、活動を開始した。
LTAR-WG では、基本方針の確定、運用面の検討、システム/ツール面の検討の 3 つの面で検討する計画である。基本方針では、既存の関連規格やガイドラインの調査、長期保管の目的、要件、対象とする情報の明確化を行い、運用面では、保管期間、保管フォーマット要件、保管プロセスの検討を行い、システム/ツール面では、保管データの品質保証、再現性の要件を明確化する。そして、これらの検討結果をまとめ上げ、2012年 9月 にガイドラインを発行するスケジュールで進めている。
トヨタ自動車は、紙図面正 → CAD データ正、細部まで最新化保証、CAD データ一元管理と有効活用など、データ正活動を推進中であり、3D 図面主体の業務に移行しつつある。
このような中、従来の紙の技術情報は Tiff データやマイクロフィルムで社内規格にのっとり、保管管理してきたが、3D CAD データについての管理運用ルールは未確定であり、ルールを策定し、確実な保管管理運用を実施することが必須である。
取り組み方針としては、国際的な動向や業界動向にも目を向けつつ、設計・生産技術・製造・サービス・訴訟対応部門など、長期保管データを利用するユーザの意見を反映していく必要がある。さらに、JAMA への要望提起と決定事項の自社への反映も必要だ。長期保管に関する IT 技術の動向もよく見極める必要がある。
長期保管する目的は4つ、企業活動としての保管、特許係争 ・ PL 訴訟への対応のための保管、補給部品の品質保証のための保管、車両開発における参考情報としての保管である。
CAD データの保管方法を考える際、情報を利用する部署が、それぞれどの時期に、どのような目的で、どのように利用するかを明確にした上で、それに見合った保管方法を考える必要がある。製品の生産が打ち切られてからしばらくの期間までは、設計・生産準備部門が設計変更への対応や派生車種検討( CAD データの再利用 )のために CAD のネイティブデータを保管しておく必要がある。
しかし、それ以降の長期にわたっては、サービス部門や訴訟対応部門などを中心に、データを参照する目的で、互換性に優れた Viewer データや CAD 中間フォーマットデータなどで保管することが良い。
XVL などの Viewer フォーマットと CAD 中間フォーマットを長期保管の観点から比較検討した結果、Viewer フォーマットは、データ容量が小さく、3D 図面( 寸法や注記など )への対応が整備されているため、CAD の中間フォーマットより優位性があると考えた。
長期保管データに求められる要件は、CAD データが漏れなく再現できること( 設計意図が確実に伝わること )、データサイズが小さいこと、マルチ CAD において同一レベルの変換が保証されること、長期的に互換性が保たれること、長期的に継続して保管データが利用できることの 5 つだ。
JAMA における Viewer に求める要件は、第一要件として、CAD 情報が漏れなく再現できること、第二要件として、Viewer 活用に際して必要な機能を有することとしている。
トヨタ自動車は、JAMA の検証結果を参考にしつつ、様々な部品について、複数の Viewer データに変換し、形状の漏れや変換精度、データ構造、データサイズ、マルチ CAD 対応の各項目について検証を行った。XVL は CAD データの情報が確実に反映され、満足な結果が得られた。
様々な検証結果を踏まえて、トヨタ自動車は、3D 図面の長期保管について、部品の生産打ち切り後のある期間( データの再利用が必要とされる期間 )までは、CAD のネイティブデータと XVL の両方での保管、また、生産打ち切り後、ある期間を経過した後の長期( データの参照が必要とされる期間 )にわたっては、XVL データのみを保管する方向で、保管運用を検討中である。
トヨタ自動車における 3D 図面の長期保管には XVL が最良と判断し、長期保管運用を検討中である。長期保管運用を実現させるため、ラティス・テクノロジー殿には、長期保管データの再現性保証、保管データの品質保証、マルチ CAD 対応の保持の 3 つを継続的に実施いただくようお願いする。
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CAD データ( 3D 図面 )の長期保管
トヨタ自動車株式会社
エンジニアリング情報管理部 主幹 福田 順三 様
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