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SPECIAL 対談|マテリアルリサイクルを実現する究極の 3D プリンターを目指して

2022年1月18日

2022年
1月

[エクストラボールド × ラティス・テクノロジー]

マテリアルリサイクルを実現する究極の 3D プリンターを目指して ~地球にやさしいモノづくりに貢献する~

株式会社ExtraBold 代表取締役 原 雄司 様とラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 鳥谷 浩志

鳥谷:
今回は、3D プリンターの第一人者で、2017年に株式会社ExtraBold (以下、エクストラボールド) を起業、新しいコンセプトの 3D プリンター開発に挑戦されている同社の代表取締役 原 雄司さんをお迎えしました。

本日は貴重なお時間を頂戴し有難うございます。原さんとの出会いは、1990年代、CAM メーカーの株式会社グラフィックプロダクツとか株式会社リアルファクトリーに原さんがいらした頃ですね。

原:
鳥谷さんが株式会社リコーで 「DESIGNBASE」 を開発されていた頃ですね。DESIGNBASE がきっかけとなって、理化学研究所に出入りするようになり、そこで見た光造形機に衝撃を受けたことは鮮明に覚えています。その時代は、今のような 3D プリンターという言葉がなかったのですが、それがきっかけとなって現在の 3D プリンターに関わるようになりました。

鳥谷:
懐かしい時代ですね。原さんとは、不思議な縁でつながっていますね。3D プリンターブームが去った頃、エクストラボールドを立ち上げられたわけですが、どのような背景があったのでしょうか?

原:
エクストラボールドを立ち上げる前にいた会社では、海外製の 3D プリンターを販売していました。しかしながら、海外製の 3D プリンターは、日本のビジネスの事情に合致しないことが多く、日本の要望にもタイムリーには応えてもらえず、歯がゆい思いをしていました。それならばいっそ自分でと思い起業しました。

鳥谷:
思い切った決断でしたね。2010年にクリス・アンダーソンの提唱したメイカームーブメントをきっかけに、壮大な 3D プリンターブームが来て、会社も個人も 3D プリンターを持つ時代が来ると言われたものでしたが、そうはならなかった。今でも 3D プリンターといえば、アメリカやイスラエルの会社が優勢ですが、海外製品のどこが問題だったのでしょうか?

原:
材料、大きさ、メンテナンスの 3点です。まず材料というところですが、日本では、化学メーカーが非常に優秀で、製造企業の要望に応じて膨大な材料を提供しています。それに対して海外製の 3D プリンターを利用する際、自社の指定した材料を使う必要があるため、実用上、大きな問題となります。

2点目として、大きな製作物を 3D プリンターで作ろうとする際には、当然それに応じた規模の 3D プリンターを準備する必要があるのですが、大きな 3D プリンターとなると、費用が跳ね上がります。

3点目はメンテナンスです。深刻なトラブルに直面した際、海外から遠隔でサポートすることは難しく、海外から技術者に来てもらうための調整に膨大な時間を要します。当然お客様の求める時間軸とは合致しません。

鳥谷:
なるほど、実製品と同じ材料では製造できなかったり、大きなものを製造できなかったり、それに加え深刻なトラブル時の普及に時間がかかるようであれば、販売していて歯がゆかったでしょう。ところで、昨今の 3D プリンターの市況はいかがなものでしょうか。

原:
台数ベースでは頭打ちになっていますが、産業用に関しては、特に金額ベースで伸長しています。昨今のデジタル家電を中心としたスタートアップでは、当たり前のごとく 3D プリンターを購入して、3D プリンターを使って試作を行いながら、アジャイル開発を行っています。若者と、製造業を定年退職した経験と勘を持つベテランが一緒にビジネスを回していることも多く、これからを楽しみにしています。

鳥谷:
ハードの開発もアジャイル化し、そこで 3D プリンターが利用されているというわけですね。若者の 3D 設計のスキルはどうなのでしょうか?

原:
最近では、Autodesk (オートデスク) が 「Fusion 360」 など、個人が無料で 3D CAD を利用できる仕組みが整ったことで、今の学生や、若者の間では 3D が随分身近なものになりました。中学生の息子も 3D CAD に興味を持ち始めたので、早速 3D プリンターを買い与えました。

鳥谷:
英才教育ですね (笑)。

原:
先ほど 3D プリンターに関して、市場は飽和状態しているという話はしましたが、3D プリンターの利用は定着してきていると思っています。アメリカの CES (Consumer Electronics Show) で話を聞くと、様々な製品の開発で、3D プリンターが当たり前のものとして利用されています。また日本においても、3D プリンターで樹脂模型を製作し、それを原型として使用し製品を作成する、実に日本らしい使い方をしている会社も出てきました。

鳥谷:
日本での製造業でも試作品ではなく、製品を製造するケースは増えているのでしょうか?

原:
まだ製品への適用しているケースは少ないと思っています。コスト削減できないかという観点から取り組まれることが多く、3D プリンターの特徴を知り、その特徴を生かすための設計から変えていくという発想になっていないことも大きいと思います。

鳥谷:
なるほど、3D プリンターの台数だけを追っていたら見えない視点で、最前線にいる原さんならではのお話ですね。それでは、エクストラボールドのビジネスの話に戻しましょう。

原:
様々な協力を得て、2021年9月に量産機をリリース (プレス:ExtraBold が大型 3D 積層造形機 EXF-12 の量産機を発表) することができました。

リリースされた量産機の EXF-12
EXF-12 で生成したイス

鳥谷:
量産機と言われている意味はなんでしょうか。

原:
私達の中では、組立マニュアルを出せば、委託先の工場ですぐに 3D プリンターを組み立てられる状態のことを量産と定義しています。部品はミスミから仕入れることができます。まだまだ課題は残っておりますが、スタートラインには立てたと思っております。

鳥谷:
製品化にあたって、苦労した点はどのようなところでしょうか。

原:
恥ずかしながら、ソフトウェア出身にもかかわらず、ソフトウェアを軽視し、後回しにしたことで、後からハードウェアとのバランスを取ることに苦労しました。

どうしてもハードウェアにお金がかかるので、ソフトウェア部分が後回しになるのです。やはりソフトウェア、ハードウェアの両軸での開発が必要だと改めて思いました。

鳥谷:
開発には 3D の知識も必要ですよね?ラティスでも XVL を開発するために、3D の基礎知識は欠くことができません。

原:
もちろん、3D の基礎知識がなければ 3D プリンターの開発はできません。若手に 3D の教育を行い、ベジェ曲線だとか NURBS、STL だとか、T-スプラインとか、あとデータ交換における PDQ (Product Data Quality) などを教えました 。改めて 3D 基礎知識の重要性を認識しました。

鳥谷:
昔取った杵柄ですね (笑)。海外製 3D プリンターの、材料、大きさ、メンテナンスという 3つの課題は解決されたのでしょうか?

原:
材料に関しては、汎用のものが使えるようになります。当然ランニングのコストも、感覚ではありますが、1/50 ぐらいになります。またメンテナンスに関しては、お客様自身で初期メンテナンスを実施頂けるようにして、対応のスピードを上げコストを下げています。当然スキルトランスファーは必要なので、現在は、導入前にご来社頂いての教育を受けて頂いております。

鳥谷:
なるほど実機での教育を実施されているのですね。

原:
実は、今日お伺いする際に、ラティスさんの XVL ソリューションを利用して、ビジネスの効率を上げられないかと考えていました。どのよう方向で、どのように 3D プリンターヘッドを取り付けるかを、誰にでもわかりやすく理解させたいです。

鳥谷:
メンテナンスの教育で言うと、最近 VR で実施される会社が増えています。例えば遠隔 VR でベテランの動きを共有し若手が勉強する、あるいはその逆に、若手の動きをベテランが指導するということができます。直感的に理解しやすい XVL VR で、実機なしでも、リアルな体験ができることがポイントになっています。

原:
実は最近海外からもお問い合わせを頂いており、そういった 3D を使った VR 教育を実施できれば、一つの解になりそうです。

鳥谷:
お客様に、実地での教育前に、XVL VR で製品を体験頂くとメンテナンスのための教育期間を短縮することも可能ですね。

原:
それはお客様にとっても、我々にとってもメリットのある話になりますね。

鳥谷:
3D プリンターを、すべて 3D で設計されているようであれば、3D を使った製造指示書やサービスマニュアルを作るといった他の XVL ソリューションもお役に立てそうです。

原:
ありがとうございます。改めてご相談させてください。

鳥谷:
喜んで。ところで以前、原さんから 3D プリンターという言葉が嫌いと聞いた記憶があります。なぜでしょうか?

原:
3D プリンターの定義って、「プリンターヘッドを使っているもの」 で、ボタン一つで印刷完了というようなイメージを持たせてしまいます。しかし、現実はそうではないのです。学会ではアディティブマニュファクチャリング (Additive Manufacturing:AM) と呼んでいますが、私が馴染んでいるのは 「積層造形機」 という呼び名です。今、実際に作っているマシンは、工作機械なのだと思っています。

鳥谷:
なるほど。プリンターではなく工作機械を提供する会社なのですね、原さんの会社は。この対談では、積層造形機ではなく、皆様に耳馴染みのなる 3D プリンターで統一させてください (笑)。

原:
わかりました (笑)。先ほど工作機械メーカーだと申し上げましたが、工作機械メーカーと競合するのではなく、協業したいと考えています。工作機械に、我々の 3D プリンターヘッドを搭載できるようにすれば、製造業で 3D プリンターを使用する敷居が大幅に下がります。

EXF-12 のプリンターヘッド部分

鳥谷:
3D プリンターと工作機械を統合して製造業に提供するということですね。それは素晴らしいアイデアです。

原:
3D プリンターと工作機械が組み合わせることで、中仕上げぐらいまで積層造形でやって切削ということが可能になり、大幅に切子が減らせると思います。そうすれば環境負荷も低減でき、社会的な課題解決にもつながります。最近思うのは、課題解決できるということを使う側が意識せず、使える環境を整えることが大切だと思っています。

鳥谷:
ビジネスを営みながら社会課題を解決している、まさしく現代のベンチャー企業ですね。

原:
私もそういったことを意識してビジネスをしてきたわけではないのですが、今回のビジネス立ち上げの際に、シリアルアントレプレナーで、投資家でもある孫泰蔵さんと出会い、そういったことを意識するようになりました。切子が減ってというような話は一般の人には実感して頂くのが難しいので、具体的な排出量などを示して説明するようにしています。

鳥谷:
やはり孫泰蔵さんクラスになると視点が一段も二段も上ですね。今後はどのように展開を考えられているのでしょう?

原:
いろいろとアイデアは溢れています (笑)。ロボットに 3D プリンター、切削や塗装、色々なヘッドを用意してモノづくりをさせるとか。3D プリンターをコンテナに収めて、切削コンテナや塗装コンテナを用意し、それらを組み合わせると小さな工場ができる…。

鳥谷:
面白い。その発想はどこから出てきたのですか?

原:
サンダーバード 2号のようなものを作りたいと思いましたね。今日はプリンターコンテナみたいなイメージで。

鳥谷:
少し古いですね。我々世代しかわからないじゃないですか (笑)。

原:
最近はリサイクルというところに非常に興味をもっています。先祖代々使ってきたものを、粉砕して改めて新しいものを作るということになると魂というか、DNA 的なつながりを感じますよね。クリエイターやデザイナーとも連携し、彼らの発想力やセンスで、3D プリンターを作るところだけではなく、実際の使い道でもアドバイスもらっています

たとえば、昨今プラスチックが悪者にされていますが、そういったリサイクルを行って、使いまわすことは非常に有意義だと思っています。究極的には、リサイクルをうまく回して、地上資源だけで社会を回せるようになるのが理想です。

鳥谷:
新たに地下資源を採掘せずということですね。昨今では、世間で DX (デジタルトランスフォーメーション) がキーワードとなっていますが、そことの絡みはいかがでしょうか。

原:
この材料とあの材料を混ぜた時、その時の温度などの条件、そして結果どうなったのかを AI に学習させ、最適の組み合わせを実現したいと考えています。将来的には、3D プリンターそのものより、このナレッジの方がビジネスになるかもしれない。この知見をブロックチェーンで管理して、集合知になれば面白いでしょう。

鳥谷:
今日は社会問題を解決するエクストラボールドさんのビジネスに大変興奮しました。同時にラティスの 3D も貢献できるところは大きいと感じました。是非とも色々協業させて頂ければと思います。

原:
こちらこそよろしくお願いします。

鳥谷:
本日は長時間にわたってお時間頂戴し、有難うございました。

END

・XVL はラティス・テクノロジー株式会社の登録商標です。
・その他記載されている会社名および製品名は各社の登録商標または商標です。


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