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SPECIAL対談|世界的な課題に立ち向かう荏原製作所と攻めのDXを考える~先進のXR技術でクリエイティブな作業環境を創出する~

2023年7月12日

2023年
7月

[荏原製作所×ラティス・テクノロジー]

世界的な課題に立ち向かう荏原製作所と攻めのDXを考える
~先進のXR技術でクリエイティブな作業環境を創出する~

“DX注目企業”や“DX認定”を受け、注目を集めている株式会社 荏原製作所(ホームページ)。今回は、同社で“攻めのDX”を担っている戦略技術研究部 平田様、田辺様にDXの取り組みについてお話しを伺いました。

株式会社荏原製作所、戦略技術研究部 xR技術推進課長 平田 和也 様、株式会社荏原製作所、戦略技術研究部 xR技術推進課 田辺 凱太 様、ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 鳥谷 浩志、

鳥谷:
本日は、お忙しい中、貴重なお時間を頂戴しありがとうございます。荏原製作所さんと言えば環境の会社というイメージが強いですが、実際はいかがでしょうか。

平田:
荏原製作所の事業としては、大きく風水力、環境、精密電子という3つのセグメントがあります。従来から事業の柱となっているのは、風水力で、そこに水素や原子力を絡めて、利益率を一層向上させることがテーマとなっております。

鳥谷:
カーボンニュートラルという世界的な課題にまさしく立ち向かわれているわけで、今後の事業発展が楽しみですね。平田さん、田辺さんの所属されている戦略技術研究部というのは、荏原製作所さんの中でどういうことをされているのでしょう。

平田:
戦略技術研究部は、XR(エクステンデッド・リアリティ:Extended realityまたはクロス・リアリティ:Cross Reality。VR(Virtual Reality:仮想現実)、AR(Augmented Reality:拡張現実)、MR(Mixed Reality:複合現実)等の技術の総称)や3D金属積層プリンタを中心として、荏原製作所のDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を支えている部署です。その中でもxR技術推進課はプレイステーション®でVRが利用できるようになった頃、2017年に立ち上がった部隊になります。発足当時はIoTという言葉が非常に飛び交っていたころで、IoTで何ができるかを検討していました。現在は、社内公募などを行い、メンバーは少しずつ増えて、現在は8名となりました。

田辺:
私は現場で設計をしていたのですが、社内公募で、一昨年から戦略技術研究部に加わりました。

鳥谷:
荏原製作所さんのWebサイトを拝見していると、経営情報の中にDX戦略が詳細に記述されています。“DX注目企業”や“DX認定”を受けており、DXへの意気込みを感じました。先ほどDX戦略を支える、というお話がありましたが、詳しくお聞かせいただけますか。

平田:
弊社では、DXにおいて“攻めのDX”“守りのDX”があると定義しており、私たち戦略技術研究部は攻めのDXを推進しています。一方、安全、セキュリティに関わるような領域を守りのDXと定義しています。守りのDXは非常に難しいことで、そこは別の部門にお願いしております。

鳥谷:
攻めのDXを担当する部門はどういう経緯で誕生したのでしょうか。また、そのミッションは何でしょうか。

平田:
私は入社以来、研究開発畑を歩んできましたが、その中で設計部門や品質部門といった他部門とも一緒に仕事をする機会が何度もありました。製品に不具合が発生すると、お客様に多大なご迷惑をお掛けするということから、なかなか新しいことにチャレンジできないことを理解しました。そこで、新しいものを調査研究し、チャレンジする我々のような専任部隊が必要なのだと理解しています。仕事のやり方も旧態依然で変わらなければ、生産性も上がらないので、そこを切り開いていくのがミッションになります。

田辺:
私たちは、新しい技術をリサーチしながら、その技術を製品だったり、事業プロセスに落とし込めないか検討したり、その新しい技術で、新しくビジネスを立ち上げ、利益を出せないのか、ビジネスプランまで提案していこうとしています。

鳥谷:
そうなってくると、田辺さんのような事業部門での経験が非常に重要で、生きてきますね。

平田:
仰る通りです。とはいえ、新しい技術を実ビジネスに適用するのは日本人が苦手としている領域だと思っています。これまでも風車などの自然エネルギーやゲノム解析、そして原子力に戻り、今はDXブーム。新しい技術は一時的にブームで盛り上がり、大学や研究機関がかたちにして、多くの企業がその領域に飛び込みます。しかしながら、成功を収めたと言えるのは、ごくごく一握りだと思っています。基盤技術をどう応用し、ビジネスに結び付けていくかはメーカの使命だと思うのですが、実際その基盤技術をビジネスに結び付けるのは難しいことだと痛感しております。逆にラティスさんは、3Dの軽量技術を生業にして、25年ビジネスをされており、今日はそのあたりの秘訣を教えていただきたいと思って来ました(笑)。

鳥谷:
ありがとうございます(笑)。ラティス創業当時はネット上の3Dブームのような状況だったので、数百社単位の会社が3D領域でビジネスを立ち上げようとしていました。しかしながら私の知る限り、現在も生き残っているのは、当社ともう1社です。

平田:
それはなかなか厳しい現実ですね。もう1社は私の知っているような会社でしょうか。

鳥谷:
NVIDIAです(笑)。彼らも当初は3D CGの描写を可能にする廉価なパソコン用のGPUを出していました。

平田:
NVIDIAですか!それは驚きです。現在の仕事をしていて感じるのは、先進の技術でROIを示すことは非常に難しいということです。事業部門に適用して業務がどれぐらい効率化できるのかを算出するのは、非常に難しいです。

鳥谷:
ハイテクマーケティングでは最初にまずROIを気にせず先進技術を導入するユーザを「イノベータ」、ROIを意識するユーザを「アーリーアダプター」と呼びますが、まさにイノベータということでしょうか。

平田:
イノベータと言っていただけるのは非常に光栄です。我々は、事業部に対してデモを実施するだけでは単なる作業となってしまいますので、先ほどお話したように、社内の各事業部の職種を分析して提案するように心がけてはいます。

鳥谷:
XRを中心に取り組まれているとのことですが、製造業では、VRやARで実運用に至っている会社はまだまだ非常に少ないと感じています。

新堀:
私は、企画部門でXRの担当をしているのですが、VRが運用に至らない理由として一つ大きいのが、VRで見るための準備に非常に時間がかかることです。データ容量が重いこともあり、VRで見るために、データを加工する準備時間が必要になります。

田辺:
XVLデータが軽量なこともあり、VRで見るためデータ準備が不要なところは、とても素晴らしいですね。

新堀:
ありがとうございます。XVL VRは準備レス、実機レス、設変レスを売りにしており、それがお客様に響き、利用いただけている所以だと思っております。具体的に社内の業務でXRを使われているところはありますか。

田辺:
藤沢工場に来社されるお客様に製品の3Dを見せる用途で使用しています。VRで実際の製品を見れるのは、来社されるお客様にとって非常に印象に残る体験となっていると聞いています。元々は設計・開発で利用することを想定しており、例えば点検口に人が入れるスペースがあるかということのチェックなどで使用できると考えています。また、作業時の事故を減らすための安全教育でも有効だと思っております。私達はお客様に大型のポンプを納めていることから、小さなミスでも人命に関わります。当然実機を使っての再現はできないので、3Dを使ったリアリティのある安全教育は非常に価値のある使い方です。この辺りは、既にサンプルを作っており、着々と準備を進めております。

平田:
弊社では、地方からも新人を採用しているのですが、生活している寮の様子などを3D化して、生活環境を見て頂くことで、親御さんにご安心して頂けるのではといった少し変わったVR活用のアイデアもあります。それが安心して働ける会社のアピールへとつながり、採用率が高まることを期待しています。

鳥谷:
VRの活用は、組立やメンテナンスでの利用にばかり頭がいきがちですが、採用や営業に活用するというのは面白い発想ですね。ところで、XVL ARをご評価いただいていると聞いておりますが、どのような領域での利用を想定されていますか。

田辺:
ARは点検業務で活用できるのではと思っています。現在は、品証などが外観検査をおこなって、穴が開いているかというところをチェックしています。半導体製造に欠くことのできないCMP装置(Chemical Mechanical Polisher)は、自家用車の倍近い部品点数からなっています。外観検査しなければならない箇所も膨大です。そういった検査の場面で、今まで紙と現物で見比べていたものを、タブレットと3Dを用いての検査に置き換え、そのまま入力もできれば、生産性は確実に上がるでしょう。

新堀:
部品点数が自動車以上となるとデータは確かに重く、3D CADではハンドリングが難しいでしょうね。

田辺:
精密事業においては、軽量性に定評のある3D CADを用いているのですが、部品点数の関係もありデータは非常に重くなるため、こういったAR系のソリューションは非常に効果的だと感じます。一方で現場作業者がARにおいてタブレットを用いようとすると、両手が塞がってしまい作業を止めなければなりません。そうするとどうしても作業効率が落ちてしまうため、スマートグラスなども対応して欲しいと思っています。

鳥谷:
同様な要望を他の先行ユーザからも聞いており、XVL ARではタブレット版を発売し、続いて、スマートグラス版の開発も進めている最中です。

田辺:
それを聞いて安心しました。他の先行ユーザでは、ARをどのような用途を想定されているのでしょうか。

新堀:
セマンティックPMI(ソフトウェアが自動処理するための PMI (Product Manufacturing Information:製品製造情報))をXVLに変換できるように取り組んだ結果、先進的なお客様の間では、3Dを正として、3D図面を流通させようということに取り組み始めております。そうなってくると、寸法がXVLにわたり、ARを現物と重ねることで、寸法検査が効率よく、より簡単にできるのではと想定しています。

鳥谷:
もう一つの分野がサービスの領域になります。XVLを使ってパーツカタログや、サービスマニュアルを作っている会社はたくさんあります。それを一段進めて、CADの3DモデルをS-BOMと連携しXVL化し、サービスに必要な情報を3Dですべて見せるという取り組みがあります。そうなるとサービスの現場においてARで、故障部品の発注先や価格といった情報を現物上に表示可能になり、サービス手法を大きく変えていけるのではないかと確信しています。いずれは製造業の保守のビジネスモデルを変革できるでしょう。

平田:
風水力のビジネスも非常に製品寿命が長く、サービス領域でのビジネスは重要な課題となっており、非常に参考になります。

新堀:
逆に古い製品だと現物の形が変わってしまっていることもあり、そこも含めてARで扱えるよう研究しています。

田辺:
まだまだ3D化を進めている途上である弊社にとっては、点群、そしてそれをモデルとして扱えるXVLには非常に魅力を感じています。対談前に見せて頂いたAzure Kinectを使ったリアルタイム点群は素晴らしく、強いインスピレーションを受けました。

平田:
これからVRのヘッドセットの値段が下がり、社内のあちこちにヘッドセットがあって、3Dもクラウド上にあり、簡単に3Dで立体視できる状態というのは近い将来実現します。XVLの技術は、その実現を早めてくれますね。

田辺:
社内でも、まだまだXRって何だ、何に使えるのかと疑問に思っている人たちも多いので、ビジネスプランをしっかり提案し、コンテンツを充実させ、当たり前に使える、使っている環境にしていきたいと思っています。

鳥谷:
XVLの先進ユーザの中には、全工場の点群データを取得、整備されているところもあります。工場建屋や設備の点群と製品の3Dモデルを統合して、VR世界でシミュレーションを行う会社も現れています。

平田:
まさにデジタルツインの世界で、バーチャル工場を実現しているということですね。お話聞いただけでもワクワクしてきますね。

新堀:
コロナの影響で、これまで海外から日本に来て工場のレイアウトなどを学ぶことが難しくなったことから、3Dを使って、バーチャル工場を見て、測定もできるようにされました。

鳥谷:
XRの技術は、これからの日本の製造業にどのように貢献できると考えていますか。

平田:
これまでコンテンツを平面視していた。それを立体でディスカッションするようになることで色々変わるのではと考えています。デジタルツイン世界が実現し、バーチャルなのか、リアルなのかがわからない世界になってきます。そうなったときに、どのように産業応用ができて、どのように製造業が変わっていくのかをどんどん提案していきたいです。

鳥谷:
ところで、荏原製作所さんでは、DXに先駆的に取り組まれているわけですが、そもそもDXをどのように捉えていますか。

平田:
一般論ではありますが、第一次産業革命で蒸気機関が発明され、人間は力から解放されました。第二次産業革命でベルトコンベアができ、高度生産方式ができ、大量生産が可能に。人間が飢えから解放されました。第三次産業革命でストレージやIT化が進みなどにより、記憶することから解放されました。第四次産業革命ではIoT化とともに、第三次産業革命のIT化と相まって、人間が単純作業から解放されると思っています。AIにXR、量子コンピューティング、そういった基盤技術がどんどん発展し、人間は単純作業から解放され、クリエイティブな作業に専念できるようになります。VR/ARのようなクリエイティブな作業をサポートする技術はますます必要とされるでしょう。そういう状況になっていくことがDXだと思っていますし、そういう社会がこれから始まっていくのでしょう。

鳥谷:
ラティスは「製造業DX×3D」というコンセプトのもと、DXを3Dで推進しよう唱えています。データが重たくて、設計でしか活用されていなかった3Dデータを軽量化し、XVLパイプラインで全社に流通させ、全社そして取引先まで3D活用できるようにします。そうなると3D設計し、そのまま3Dで流通させることで図面を描く手間はなくなります。組立手順も3Dで検証し、できた手順から作業指示書を自動生成できます。サービスBOMと3Dを連携すれば、パーツカタログやサービスマニュアルは自動作成できるでしょう。平田さんの指摘された単純作業からの解放、クリエイティブな作業への専念にXVLは大きく貢献できます。3Dが当たり前というCasual3Dの世界を後押ししていくのがラティスのミッションです。

製造業DX×3Dとは3Dデジタルツインの流れをつくること

平田:
Casual3DとXVLパイプラインの構想、大変楽しみです。3Dが当たり前になればなるほど、軽量化の重要性は増してくると思っており、ラティスさんの技術力には非常に期待しています。それに加えPLM領域では、海外CADベンダーが力を持っており、なかなか私たち日本のユーザの声が届かないのが実情です。是非とも、先進的な技術をご提案頂き、建設的にディスカッションさせていただければと思っておりますのでよろしくお願いします。

鳥谷:
是非協調してやっていきましょう。今後ともよろしくお願いします。

END

【用語解説】

  • 製造業DX×3D:「製造業DX×3D」とは、現地現物のすり合わせや図面を読み解く現場力が必要な日本の製造業(=デジタル家内制手工業)に対して、XVLパイプラインによる3Dデジタルツインのデータの流れをつくることで、製造業全体でデジタルで擦り合わせが行われ、デジタルで現場力が強化されるという、日本の製造業の強みをデジタルで引き出すという考え方。
  • XVLパイプライン:「XVLパイプライン」とは、3Dデジタルツインの情報の流れをつくり、組織の垣根を超えてその情報を徹底活用することでDXを推進する仕組みのこと。
  • Casual3D:「Casual3D」とは、製造業おいて「どこでも、いつでも、だれでも」3Dデータが身近にあり活用できる世界のこと。ラティス・テクノロジー株式会社が目指す世界。
  • 3Dデジタルツイン:「3Dデジタルツイン」とは、現物と図面の双子となる3Dモデルのこと。現地現物を軽量XVLで表現し、図面情報情報をXVLに集約することで、現物に近い3Dモデル(=3D形状+構成情報+ものづくり情報)になるという考え方。ラティス・テクノロジー株式会社の登録商標です。

【その他】

  • ・XVL、Casual3Dはラティス・テクノロジー株式会社の登録商標です。その他記載されている会社名、製品名など名称は各社の登録商標または商標です。

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