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XVL対談|C.T.I.Tayama × ラティス・テクノロジー
2024年9月11日
2024年
9月
3Dで進化を続けるテクニカルイラストレーションの世界
今回のXVL対談は、テクニカルイラストレーターとして独立して身を立てると共に、日本ビジュアルコミュニケーション協会の事務局長にして、セミナーの講師も務められている田山達也氏をお招きして、テクニカルイラストレーションの進化についてお話を伺いました。
鳥谷:
本日は、テクニカルイラストレーターの田山さんをお迎えして、昨今のテクニカルイラストと3Dデータ活用の状況についてお話しできればと思っております。田山さんはイラストレーターの団体である日本ビジュアルコミュニケーション協会の事務局長をされていて、セミナーの講師もよくやられていますね。田山さんには、十数年前XVLからのイラスト生成機能を開発する時に、いろいろ助言をいただきました。その節は、ありがとうございました。早速ですが、自己紹介をお願いします。
田山:
改めまして田山達也と申します。現在はテクニカルイラストレーターとして仕事をしています。パーツリスト・パーツカタログや特許・意匠図面、各種説明書用イラストなどの制作を生業としております。ご要望をいただいてお客様の拠点で仕事をすることもありますが、今はオフィスで仕事をして、ネット経由で納品物を納めることが主となっております。
鳥谷:
イラスト制作の依頼はどういう経緯で舞い込んでくるのでしょうか。
田山:
お客様からの紹介も多いですが、最近では、 ホームページ(C.T.I.Tayama)や、ブログ(テクニカルイラストレーターの!!!)、YouTube(たっチャンネル)などを見てご相談いただくことが増えてきました。
鳥谷:
どういう経緯でテクニカルイラストレーターを生業とされるようになったのでしょうか。
田山:
私は、大学の理工学部で機械工学を勉強し、大手や省庁向けの汎用機用のソフトウェアをやっている会社に就職しました。私のルーツはソフトウェア開発にあります。当時作っていたソフトウェアにバグが多く、気が付けば上司が会社を去り、現場で指揮してくれとなっていました。そうなると家に帰るのは週1回という世界です。
鳥谷:
いかにも昭和的な働き方ですが、当時でも、週1回しか帰れないというのは稀ですね。
田山:
本当に24時間働けますかという状態でした。これでは体がもたないと思い、その会社を辞め、興味を持っていた特許の世界に足を踏み入れました。特許図面を勉強するために通信教育を始めたら、テクニカルイラストに出会ったのです。図面と言うと、一般的には機械図面とか、建築図面を想像するのですけど、特許でいう図面って、取扱説明書の挿絵そのものなんです。グラフも表も機械の断面図もあれば、立体的に描く絵も説明のための絵として特許には使われます。
鳥谷:
当時はそういった絵をどのように描いていたのでしょうか。
田山:
最初は手描きでした。鉛筆やロットリングのペンで手描きしていました。Windows95が世に出て、CADが出てきて。最初に声をかけてくれメーカーにCADで描いてくれと言われたタイミングで、パソコンでやり始めました。AUTODESK社のAutosketch(以下、オートスケッチ)で作図を始めました。
鳥谷:
AdobeのIllustratorではなかったのですね。イラスト制作といえば、Illustratorだと思っていました。
田山:
はい。デザインや、マニュアル会社からテクニカルイラストの世界に入ると、通常使用するのはAdobeのIllustratorです。しかし、メーカー直で仕事をスタートしたので、CAD出発でした。実は、Illustratorから出力したデータをCADに持っていくとメーカーからは文句を言われます。
鳥谷:
それはまた、どうしてでしょうか。
田山:
CADと、Illustratorの精度の違いで、CADは小数点以下15桁くらいまであるのに対して、Illustratorは3桁くらいしかないので、線が全部繋がっていませんと指摘されます(笑)。Illustratorは元々製造をするためのソフトじゃないので仕方がないと思うのですが、いまだにそうです。その他、3DTigerや、図脳Rapid3Dも使っていました。
鳥谷:
それは懐かしいですね。3DTigerはIllustratorのプラグインとして、2000年頃、エリジオンさんと共同開発しました。フォトロンさんの図脳Rapid3DにもXVLの出力機能を提供しました。当時は3Dを利用してイラストを描くというのはまだまだ主流ではなかったですが、25年経って、現在ではどうなのでしょうか。
田山:
今は7、8割方3Dからイラストを起こしています。分解図となると3Dからが大半です。マニュアルの挿絵などでは写真のトレースをしてくれという話もあります。
鳥谷:
3Dデータはお客様からいただいているのでしょうか。どのようなフローで仕事をされているのですか。
田山:
3Dデータをお客様からいただいてXVLでイラストにして、Illustratorできれいにして渡すというのがおおよその仕事の流れです。XVLを使っているメーカーからは、XVLを直接もらえることもあります。20年前からXVLユーザーで良かったと思っています(笑)。
鳥谷:
そう言っていただけると私も大変うれしいです。田山さんは、最初のソフトウェア会社をやめてから、ずっと独立して仕事をされているのですか。
田山:
はい。ずっと個人事業主として仕事をしています。その中で特許事務所やメーカー内で派遣の形で仕事をしていた事もありました。
鳥谷:
メーカーではどのような仕事をされていたのですか。
田山:
あるメーカーでは、紙図面からイラストを起こす仕事をやっていました。畳のような長い、実寸大の組立図を壁にずらっと貼って、それと部品図を見ながらテクニカルイラストを描いていくわけです。しかし、そのメーカーも数年後には3D CAD化が進み、そうなると紙図面からイラスト化していくのは非効率だなと感じていました。
鳥谷:
確かに3D CADのデータがあるのであれば、それを使ってあっという間にできそうですね。他にはどのような仕事がありましたか。
田山:
他のメーカーでは、パーツリストのウェブ化を手がけました。各パーツにバルーンを飛ばすことで、どのパーツが何なのかを簡単に探すことができるようになり、お客様には大変喜んで頂きました。それ以前に類似したパーツリストを見ており、どのように実現できるだろうと思っていたので幸いでした。イラストとリストをデータとして与えて、Excelのマクロ流してページを全部作ってしまいました。
鳥谷:
そこではプログラマーだったことが生きたのですね。
田山:
プログラマーの頭に戻すのが大変でしたが(笑)。
鳥谷:
テクニカルイラスト制作の仕事量は独立されてから定常的にあるものでしょうか。
田山:
新型コロナの感染が拡大したタイミングでがくんと減りました。
鳥谷:
コロナでも製品の取説は必要でしょうし、イラスト制作の仕事には影響しないようにも思います。
田山:
ちょうどコロナと同じタイミングで、大きなメーカーが、外に仕事を出さずに自社で内製するようになったという印象です。3Dデータがあれば、イラストの綺麗さはさておき、絵はでき、自社でやった方がコスト削減という流れができたのではないかと思います。最近ではXVLを使うメーカーがずいぶん増えました。その結果XVLが使えて、かつテクニカルイラストを描ける人が非常に貴重で重宝されます。
鳥谷:
なるほど、まだ3Dデータがなく、2次元でイラストを描く場合もあるのですね。2000年頃我々はイラストを作る機能を、先ほどお話しされていた3DTigerで初めて開発しました。その後、XVL Studioにイラスト作成オプションを搭載しようということになります。その際、どういった機能を開発したらよいかプロのテクニカルイラストレーターに相談しようとして、Web検索していて見つけたのが日本ビジュアルコミュニケーション協会の運営委員の田山さんだったというわけです。
田山:
それ以来の長いご縁がありますね。
鳥谷:
私が非常に印象に残っているのは、最初のバージョンを評価いただいた際に、色々ダメ出しいただいたことです(笑)。最初に等角投影の表示で見せる、できるだけ直感的に分解できるようにすることが大事だ、曲線も円や楕円をきちんと描くとか、改めてテクニカルイラストレーターというのは単に絵を描いているだけじゃないということを教えていただきました。
田山:
そんなことありましたね(笑)。今のXVL Studioは格段に良くなりました。
鳥谷:
うちの開発メンバーには、この通り開発すれば、必ずお客様に使っていただけるはずだと叱咤激励して、一生懸命開発しましたから(笑)。
田山:
テクニカルイラストでは「正接エッジ」は不要です。XVLでイラストを出力した際に、正接エッジの線が表示されているのですが、XVL Studioのイラスト作成オプションでは、有効・無効設定でできるようになっているのが素晴らしいです。
鳥谷:
正接エッジですか。説明をお願いしてもよろしいでしょうか。
田山:
はい、3Dモデルで曲面が連続する場合、曲率が変わるところに線が入ってしまいます。確かラティスさんでは正接エッジという表現ではなかったと思いますが、CADの世界では正接エッジと表現するのが一般的だと思います。
鳥谷:
いまXVLを使っていただいて何か気になるところはありますか。
田山:
多少の問題はあったように思いますが、大きな問題点はないです。昨今ではテクニカルイラストレーションの国家検定試験の学科試験にもXVLが出題されていたりして、隔世の感があります。
鳥谷:
テクニカルイラストレーションの国家試験の問題でも取り扱っていただいているとは知りませんでした。3次元CAD利用技術者試験でもXVLの問題を出題いただくと共に、正解の3DをXVLのWeb3D技術を利用してタブレットやスマホでも確認できるようにしています。ところで、下記のQRコードを読み取ってもらって良いですか。
田山:
自分のスマホで3Dが簡単に見えるのですね。しかもサクサクと動きます。
鳥谷:
XVL Web3Dで実現しているのですが、ブラウザを介して3D形状を簡単に表示できるようになりました。タブレット、スマホ、パソコンなど端末を気にせず見ることができるので、3Dの可能性が大幅に広がりました。例えば3D図面。これまで紙図面で取引先に渡していたところを3Dで渡す、また、アフターサービスや保守サポート業務でサービスパーツカタログや、サービスマニュアルの中で3Dモデルを表示する用途でも使われるようになってきています。
田山:
パーツカタログも3D化されるようになってきているのですね。
鳥谷:
つい先日も日立建機様のサービスパーツカタログでXVL Web3D Managerを採用いただいたプレスリリースを発表しました。従来の2Dパーツカタログを3D化することに採用いただき、直感的かつ迅速に必要な部品情報を確認できるようになったと聞いております。
田山:
それは非常に興味深い取り組みですね。
鳥谷:
こちらの取り組みについては、9月27日に開催される『製造業DX×3Dセミナー2024』で事例講演いただく予定となっておりますので、是非ご参加ください。
田山:
教えていただいてありがとうございます。スケジュール調整してみます。
鳥谷:
図面となると、海外の方は読み解くことがなかなかできない。竹内製作所様での事例講演でもお話しいただいたのですが、3Dであれば実機と同じでわかりやすい。直感的に理解しやすい3Dの作業指示書を見て海外の作業員の方が大喜びしたと聞いています。
田山:
それは、実際のテクニカルイラストが始まった時と同じですね。テクニカルイラストの起源も、アメリカの軍需産業にあります。そこでも文字の読めない労働者の人に、どのように組み立てれば良いかということを伝えるところから始まっています。絵を描いてこうやるのだよと説明していたのですが、様々な絵の描き方が出てきたので統一しようとしてできたのがアイソメです。分かりやすくするという意味では3Dには色々発展性があると感じています。教えていただいてありがとうございます。スケジュール調整してみます。
鳥谷:
イラストにおいて3Dモデルを利用することのメリットはどういったところにあるのでしょうか。
田山:
メーカー側としては、3Dを渡すだけで済むのでコストが最小限で済みますよね。あとは絵を作ってくれと言われた時に、どうとでも絵を出せます。やはりイラストで一点ものを書こうとすると、どこからの視点ということを決めてから描かないとだめなのですが、3Dだと言われた視点で簡単に描けますし、やり直しも簡単。また断面の図も簡単に描けるのは良いですよね。特許関係では、意匠の図面で六面図を作成し整合性を保たなければいけないので大変です。でも3Dデータがあればかなり手間が省けます。
鳥谷:
特許の世界では3Dが流通しているのですか。
田山:
残念ながら、3Dでそのまま出願できれば良いのですが、中国でも中東でも、世界のどこでも誰でも見れないと駄目なので3Dでなく画像で公開されています。
鳥谷:
XVLは世界中で見ることができますが、フォーマットとして世界標準にしないといけないということですね。これからテクニカルイラストはどうなっていくのでしょうか。
田山:
おそらく、いずれアイソメ図は描ける人がいなくなるのではと考えています。
鳥谷:
なぜそう考えているのでしょう。
田山:
今は3Dでモデリングすれば簡単に絵はできるようになっていますし、テクニカルイラストを描ける人が高齢化して、人材がどんどん少なくなっています。写真トレースが唯一テクニカルイラストレーションとして残っていくのではと考えています。写真をそのまま使うとは余計なものがたくさん写ってしまいますが、イラストではそのあたり良い具合に端折れるので、とても見やすくできるのです。
鳥谷:
私たちがイラスト機能を出したころには、線の綺麗さ、見やすさというもののこだわりをすごく感じたのですが。
田山:
私はいまでも綺麗さ、見やすさというのを非常に気にしており、3Dから作成するイラストも基本全部綺麗にします。この絵を修正してくださいと修正の仕事をいただく時もあるのですが、そもそも前の絵が汚くて思わずそこから綺麗にしてしまうことがあります。昔はお客さんから、綺麗にするため不要な線を消してくれというような要望が色々と入りましたが、そういうこだわりや発想を持っている方も減ってきています。これはどうしようにもないのですが、人間が描くと線が一本なのですが、3Dだとどうしても線が重なるのでゴミだらけになり、線が太くなってしまいます。それを綺麗なイラストにするには処理が必要になるのです。
鳥谷:
一番上の線だけ出力すれば良いのでしょうね。そのあたりはAIと組み合わせていけば、今後改善できそうですね。その際は田山さんにサンプルの教師データの提供の相談させてください。
田山:
ぜひ協力させてください。
鳥谷:
今日は暑い中、誠にありがとうございました。我々は分かりやすく伝わるサービスドキュメントがますます普及するよう3Dで貢献したいと考えております。田山さんにもご協力いただく場面もあるでしょう。今後とも何卒宜しくお願い致します。
END
【用語解説】
- ・XVL:『XVL』 とは、いつでも、どこでも、だれでも、3Dを活用できる世界(=Casual3D)を目指して、ラティス・テクノロジー株式会社が開発した超軽量3Dフォーマット。
【その他】
- ・XVLはラティス・テクノロジー株式会社の登録商標です。その他記載されている会社名、製品名など名称は各社の登録商標または商標です。
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