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SPECIAL 対談|FUJI × ラティス・テクノロジー

2020年8月31日

2020年
8月

仮想と現実のギャップをゼロに。
ロボット業界にエコシステムをもたらす ”e-Sys”

電子部品実装ロボットトップメーカである株式会社FUJI(本社:愛知県知立市、ホームページ:https://www.fuji.co.jp/ 以下、FUJI)とラティスで共同開発した、ロボットシステムインテグレータの業務を支えるプラットフォーム 「e-Sys(イーシス)」 。今回、『仮想と現実のギャップをゼロに。ロボット業界にエコシステムをもたらす ”e-Sys”』 と題して、須原社長、児玉顧問、藤田部長にお話を伺いました。

※ 対談は常時マスクを着用した状態で実施いたしました。


鳥谷:
本日は、お忙しい中、貴重な時間をありがとうございます。FUJI といえば電子部品実装ロボットで大きなシェアをお持ちですね。まずは、須原社長ご自身の歩みを教えてください。

須原:
株式会社 FUJI は、富士機械製造株式会社として 1959年に誕生しました。私は、その 2年前に生まれており、同級生のようなものだと思っています(笑)。私は機械設計畑で、ここにいる児玉がソフト畑。一緒に製品を開発してきました。

鳥谷:
まさしくメカ(機械)とソフトの二人三脚で会社の躍進を支えてきたということですね。

須原:
FUJI の祖業は工作機械ですが、私が入社したタイミングは、電子部品の装着機のビジネスをやり始めたタイミングと合致します。そのころは会社の売上の 10% もいかない程度でしたが、進出したタイミングも良く、海外でのビジネスがうまく立ち上がり、大きなシェアが取れました。当時電子部品の位置決めは、メカニカルに行っていましたが、部品の形状が変わると、位置決めが難しくなり、装着ずれが発生しました。そんな中、我々は画像認識で、位置決めを行わせるようにしました。その結果、機械もシンプルになり、品質も向上しました。工作機械の領域で磨いてきた精度を押さえるメカニカルな技術と、画像処理を含むソフトウェアの技術がうまく融合したのです。

鳥谷:
画像認識は現在 AI で注目されていますが、ずいぶん昔から取り組まれていたのですね。開発時代の、最も印象に残ったことを教えていただけますか?

須原:
そうですね、当時高速のチップマウンターのスループットが 0.15秒だったものを、0.09秒と劇的に速度を上げたことでしょうか。当時はメカニカルな構成で、からくり人形と一緒ですね。機械設計者としては工夫する部分が多く楽しかったです。

鳥谷:
世界に誇れるレベルの開発に挑戦し成功することは開発者冥利に尽きますね。その後、開発はどう変化していったのでしょうか。

須原:
当時の世の中の製品は、同じものを大量に作れれば問題なかったのですが、徐々に多品種少量生産の世の中になり、柔軟性のある生産設備が求められるようになりました。当時はモジュール化ということが言われ始めていたので、ユニット単位で簡単に交換できることを意識しました。機械部分も、電気部分、制御部分も、自由に切り離しが出来て、また別のモノをジョイントさせると、また新たな機能になる。口で言うのは簡単ですが、実際やれている装置というのは、ほとんどないと思っています。機械部分も、制御部分も、すべて先を見越した上で、しっかりとした設計をしなければならない。当時は児玉と、喧々諤々の議論をしながら、構想していました。

鳥谷:
FUJI の会社沿革を眺めると、製品が自動化、画像認識による高精度化、高速化、モジュール化と進化してきたことが分かります。それは時代の要請に対応してきたものだったのですね。技術開発の要諦といったものはあるでしょうか。

須原:
私は常々、技術というのは 「予測と制御」 だと言っています。機械の動作を予測して、実際の動きを見ながら、予測した通りになるように制御する。それは今になって思うと、インダストリー4.0 やデジタルツインで言っていることと一緒ですよね。

鳥谷:
インダストリー4.0 というキーワードが出てきていますが、今後世界の製造業はどのようになっていくと思われますか。

須原:
今後ますます変種変量、いわばマスカスタマイゼーションが進むと思います。実際自動車のラインにおいても、すでに、一つのラインに様々な車種が流れるようになっています。そのような世界では、実機でシミュレーションすることが難しく、デジタルツインの技術が必要になってくると思います。第4次産業革命では、時間軸と空間軸の制約がなくなりました。デジタルツインを実現すれば、時間、場所に捕らわれずシミュレーションできるのです。

鳥谷:
ウイズコロナの時代では、ますますデジタルツインの実現が重要なテーマになっていると捉えております。弊社では、「3D デジタルツイン」 を提唱しております。

須原:
“デジタルツイン” に “3D” が付くと何が異なるのでしょうか。

鳥谷:
GE やシーメンスなどが唱えるデジタルツインは、現物から取得した稼働データが主役で、言うなれば現場のデジタルツインです。それに対して、XVL は設計の 3D CAD データを変換したものですから設計の 3D デジタルツインです。さらに、IoT で現物から取得した数値データを 3D モデル上に見える化すれば、現物の 3D デジタルツインになります。稼働状況を色分けして表示すれば、現物を見ているだけでは見えないものをデジタルモデル上で見える化させることができます。それが人間の気付きや発想を生み、いわゆるデジタルツインでは 「現場の改善」 で終わるものを 「設計の革新」 へと繋げられるようになると考えています。

須原:
それは面白い考え方ですね。

鳥谷:
ありがとうございます。少し挑戦的ですが、3D デジタルツインの実現を妨げているのは、日本の製造業をかつて隆盛に導いた、現地現物主義と図面文化だと思っています。

須原:
弊社の、社員が心がけるべき行動指針の 7つうちの一つが 「現地現物」 です(苦笑)

鳥谷:
それは失礼しました(笑)。もちろん現地現物が必須となる局面は多々あります。しかし、今や 3D デジタルツイン* で代替した方が大きなメリットがあるケースも多いのです。たとえば、現物ができる前に VR で検証することで問題を先出しするといった 「デジタル擦り合わせ」 です。現地現物に固執するあまり、気が付けば世界から取り残され、周回遅れになっていたということにならないか心配しています。
・3D デジタルツイン:紹介ページ

須原:
なるほど、そういう意図なのですね。これからは、仮想空間におけるデジタル立ち合いみたいなことが、当たり前になるのではと私も考えています。私たちが究極的に目指しているのは、工場全体のシミュレーションです。この人数、この設備で、どのように AGV(無人搬送車)で補給を行うのか。とはいいながら、一社の技術ですべて表現できるとは思ってはいないので、XVL の技術と組み合わせて実現させたいです。今後もご協力お願いします。

鳥谷:
もちろんです!

鳥谷:
それでは、今日のもう一つの大事なトピック、「e-Sys(イーシス)」 * についてお聞かせください。労働人口が減る中で、国もロボットの導入を推進しています。装着ロボットだけでも大きな事業になっていく中、なぜ、新たに e-Sys を立ち上げようと思われたのでしょうか。
* e-Sys:https://www.e-sys.market/

須原:
実装機の世界は究極的には、「予測と制御」 のデジタルツインの世界です。しかし、アセンブリ工程になると、生産設備の立ち上げは全くの人の世界に様変わりします。そこで利用される多関節ロボットになると実装機と全く異なります。私たちも、初めはロボットだけ売れれば良いと思っていました。しかしロボットを購入するお客様の多くは、ロボットを使った設備全体の自動化の提案を望まれていたのです。

児玉:
私は、現在ロボットのシステムインテグレータ(SIer)もしている会社の会長も兼務しているのですが、2000年ごろから、装置を納入する客先に生産技術者が少なくなりました。お客様の先で決定を下すだけの知識を持っている人が減ってきているのです。ロボットというのは、その動作仕様を決めて、プログラムをしてやらなければ何もできません。しかし、お客様はロボットさえ導入すれば何でもできるという過大な期待をしがちです。ここに理想と現実の間の大きなギャップが厳然と存在しているのです。このギャップがあるので、言った言わないといったトラブルが頻発します。

鳥谷:
ロボットを導入することと、自動化設備としてシステムを稼働させることの間には大きなギャップがあるのですね。

児玉:
ロボットの導入というのは、まだまだ発展途上の領域で、ロボットのエンドユーザとなるお客様とロボット SIer の商談はなかなかスムーズには進みません。ロボットを導入する際は、綿密にやることを定め、仕様を決めていく必要があります。仕様が決まらないと、ロボット SIer としても、そのビジネスを受諾するのかどうかという判断ができません。このような状況を解決すべく、商談からクロージングまで出来るソリューションを開発したのです。

鳥谷:
そこで e-Sys の登場となるわけですね。それでは、e-Sys とはどういうものでしょうか。

藤田:
e-Sys は、仮想空間上にロボットや周辺機器のデジタルツイン環境を提供することで、このギャップを埋めようというものです。SIer も、そのお客様も 3D モデルによる仮想空間上でのロボット動作を見て、納得の上でロボット導入を進められます。e-Sys はサブスクリプション方式で提供するロボット SIer 向けプラットフォームになっています。

鳥谷:
システムとしてはどういう構成になっているのでしょうか。

藤田:
ロボットや周辺機器などのモデルを提供するマーケットプレイス 「e-Sys Market」 と、それらを配置してシミュレーションを実行できる環境 「e-Sys Digital Twin」 からなります。e-Sys Market には、ロボットや周辺機器の CAD データや機構データ、動作のシーケンスプログラムなどがパッケージングされたモジュールデータが XVL で登録されており、ロボット SIer は、実際に採用する製品に対応したモジュールデータをここから選びます。

鳥谷:
ロボットや周辺設備の 3D モデルとその動作を XVL に格納して、再利用可能にするわけですね。

藤田:
はい。それらを e-Sys Digital Twin の実行環境内に配置することで、仮想空間上で設備のシミュレーションを行うわけです。現在はスキルのあるベテランがどうにか調整をしていますが、「e-Sys Digital Twin」 上で、仕様を確認し、シミュレーションを行い、認識違いや、手戻りを防ぐ仕組みを実現できます。

鳥谷:
先ほど話のあった 「予測と制御」 を、ロボットの世界で実現するのが e-Sys になるのですね。ロボットの動作をシミュレーションで予測し、正しく動くように制御する。e-Sys には、また、ロボット SIer のビジネスを拡大するという仕組みもありますよね。

藤田:
まさに e-Sys の大事なポイントです。それは、ロボット SIer が機器類とともに設定したプログラムをパッケージとして売れるようにしたことです。自分たちが一度提案した自動化設備をパッケージとして再販したいというロボット SIer の声はあがっていたのですが、外販するチャネルがありませんでした。e-Sys のビジネスが軌道に乗ってくると、お客様は安いコストでロボットの導入ができるようになり、ロボット SIer には新たな収益の機会がもたらされ、皆がハッピーになるエコシステムになると考えています。

児玉:
先ほど説明したような状況が続くようであれば、日本の製造業ではロボットの導入が遅れ、世界の潮流から取り残されてしまいます。日本のロボット業界、ひいては日本の製造業の未来を創るためには、e-Sys のように関係者皆が喜ぶ仕組みをつくっていく必要があるのです。

鳥谷:
「e-Sys Digital Twin」 の機能は、XVL Vmech Simulator(以下 Vmech)* をベースに開発頂いておりますが、どういう経緯で Vmech を選定いただいたのでしょうか。
*XVL Vmech Simulator:製品紹介ページ

藤田:
e-Sys のプラットフォームの選定では、実際何社か比較検討しましたが、Vmech を最終的に採用することとなったポイントは 2つあります。1点目は XVL の圧倒的な軽量性。ロボット以外の機械も併せてシミュレーションする必要があり、XVL の軽量性なくては成り立ちませんでした。2点目はロボットコントローラや、PLC との連携が出来ていて、動きに対する実績をすでにたくさん持っているという点です。結局は Vmech 以外の選択肢はありませんでした。新しい e-Sys ビジネスを進める中で、既にたくさんの要望もいただいております。今後も引き続きの伴走、そしてサポートをお願いします。

鳥谷:
日本のロボット業界、そして製造業の未来を創るために、ともに力を合わせていきましょう。

鳥谷:
今後の e-Sys の展開については、どのように考えられていますか。

須原:
我々の社内で、実装機の開発のコンセプトは 「オペレータの数、機械停止、実装不良の 3つの項目をゼロ」 にすべく邁進しています。今回、e-Sys で目指すのは、4つ目のゼロ、「仮想と現実のギャップをゼロ」 にしていくことです。

藤田:
4つ目のゼロを実現するには、e-Sys に賛同を頂き、商品をマーケットに並べていけるかに尽きます。それが実現できれば、これまでお話してきたようにロボットビジネスの変革者になれるでしょう。

鳥谷:
まずは、シミュレーション可能なロボットをいくつマーケットに並べられるかが勝負ですね。お話しいただける範囲で現状を教えてください。

藤田:
大手も含めて、多くの企業にプレゼンする機会頂き、たくさんの賛同をいただいております。すでに、安川電機様とは契約が済み、ロボットの 3D モデルを e-Sys に掲載できるようになりました。今後も続々と多様なロボットの掲載が決まる見込みです。現在、新型コロナの影響もあり、ビジネスが停滞している企業も多いです。しかし、こういう状況だからこそ、これまでのビジネスの進め方を見つめ直した結果、大きく成長を遂げるためには e-Sys を採用するべきだというお客様も出てきています。

鳥谷:
コロナの話題になると暗い話が多いですが、非常に前向きで楽しい話ですね。我々もピンチをチャンスに変えられるよう、最大限の協力をさせていただきます。e-Sys と XVL で是非、日本の製造業を盛り上げていきましょう!本日は、対談の時間を頂戴し有難うございました。

END

・XVL はラティス・テクノロジー株式会社の登録商標です。
・その他記載されている会社名および製品名は各社の登録商標または商標です。

(関連情報)
・e-Sys:製品紹介ページ(外部サイトにリンクします)
・3D デジタルツイン:紹介ページ(サイト内ページにリンクします)
・XVL Vmech Simulator:製品紹介ページ(サイト内ページにリンクします)

プロフィール

株式会社 FUJI 代表取締役社長 須原 信介 様

株式会社FUJI
代表取締役社長
須原 信介 様

株式会社 FUJI 顧問 児玉 誠吾 様

株式会社FUJI
顧問
児玉 誠吾 様

株式会社 FUJI 開発センター 技術部 部長 藤田 政利 様

株式会社FUJI
開発センター
技術部 部長
藤田 政利 様

株式会社 FUJI

各種エレクトロニクス製品の基板に電子部品を装着する電子部品実装ロボットで世界トップクラスのシェアを誇る株式会社 FUJI。世界一・世界初の技術などが盛り込まれた電子部品実装ロボット 『NXTIII』 は高い生産性と柔軟性を実現し、2016年には全国発明表彰にて 『文部科学大臣賞』 も受賞しています。また、創業時からの事業である工作機械も、汎用性の高い NC 旋盤や自動化のための周辺機器で自動車・部品メーカー、機械メーカーの製造現場に導入されています。

創業以来受け継がれてきた 『innovative spirit』 という理念のもと、同社の独自の発想と高度な技術力は、基本性能はもちろん徹底した自動化・省人化によって、世界中のものづくりの現場で高く評価されています。

・創業:1959年4月
・本社:〒472-8686 愛知県知立市山町茶碓山19番地
・ホームページ:https://www.fuji.co.jp/

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